2026/11/06 08:14
「オン・マニ・ペメ・フム」。チベット仏教を紹介する映像や、祈りの道具の解説で、この言葉を見かけたことはありませんか。短い響きの中に、宝珠と蓮という二つのイメージが込められています。
六字真言の「六」は、六つの音
六字真言は、慈悲を象徴する観音菩薩(アヴァローキテーシュヴァラ)に結びつく祈りの言葉です。サンスクリット語のローマ字表記は oṃ maṇi padme hūṃ。表記では四つに分かれていますが、音節で数えると「オーン・マ・ニ・パド・メ・フーン」の六つです。「オン・マニ・ペメ・フム」は、チベットでの唱え方を伝える日本語表記の一例です。
宝珠と蓮は、何を表している?
「マニ」は宝珠を意味し、「パドメ」は蓮に関わる言葉です。ダライ・ラマ14世の解説では、宝珠は人を助けようとする心、蓮は物事のあり方を見つめる智慧を表します。そして最後の「フム」は、その二つが切り離せないことを示すと説かれています。
宝珠と蓮を思い浮かべると、耳慣れない言葉にも親しみが湧きます。ここで紹介したのは仏教の教えに沿った解釈の一つで、真言全体をそのまま一文に訳したものではありません。
声で唱える祈りが、絵や織物にも
メトロポリタン美術館には、六字真言と結びつく観音菩薩の姿を描いた、15世紀後半のチベットの仏画が収蔵されています。同館には、上部に真言が織り込まれた明代の掛け布もあります。声で唱える短い祈りが、絵の題材になり、糸で織り表されてもいるのです。
チベットの祈りの道具であるマニ車も、言葉と物のつながりを知る手がかりです。筒の中に祈りの文などを納めて回しますが、中身がいつも六字真言とは限りません。同館の所蔵品には、仏教の師ミラレパの伝記の一頁が入っていた例もあります。
雑貨の意匠が気になったら、文字の由来を読んでみる
旅先や雑貨店で見慣れない文字を見つけたら、まず「何と書いてあるのか」を確かめてみてください。よく似た文字の並びでも、見た目だけで六字真言と判断するのは難しいものです。
図案の説明があれば、読み方や、どんな場面で使われてきたかにも目を向けてみましょう。普段使いの小物に取り入れられた意匠からでも、その背後にある人々の祈りや美術に触れることができます。
